映画は心の筋トレ

子どものころ観たゴジラ映画に始まって今も観続けている映画の備忘録

「バートン・フィンク」なんなんでしょう、不穏な空気が漂う不思議な映画

またまたコーエン兄弟バートン・フィンク

まず、バートン・フィンクというのは人の名前。

NYの劇作家で高い評価を得ているバートン・フィンクがハリウッドから依頼を受け映画の脚本を書くことになる。
が、なかなか思うように脚本が書けず、ついには殺人事件に巻き込まれ・・・というストーリー。

全体的に緊張感のある不吉な映画です。

ハラハラドキドキというのではなく、これは一体どう展開していくのだろう? もしくはどう収束していくのだろう? と目が離せない。

1.不気味なホテル・アール

まずバートンが宿泊するホテル・アールがどこか不気味。

暑苦しく重苦しく壁紙は剥がれてくるし寝ていると蚊にやられる。

一番不気味だったのがホテルの隣室の客のチャーリー・メドウズ。

隣室から変な笑い声がするとバートンはフロントのチェット(これがまたお馴染みのスティーヴ・ブシェミ)にクレームする。

フロントから注意されたのでしょうね。

隣室のチャーリーがやってきます。

このシーンが実は一番怖かった、というか薄気味悪いんです。

まず体がでかい!

筋肉質でなくて腹も出てぶよっとしているのが、よけいこわい。

チャーリーは少し横を向いて「You did ?」(お前か・・・文句言ったのは)とぼそり。

いや、こわいこわい・・・

バートンは、クレームしたのではなく心配したんだ、と慌てて言い訳します。

するとチャーリーが豹変。

「このホテルは壁が薄いからなぁ、迷惑かけた。お詫びに一杯飲もう。」と満面の笑顔で。

でもこんな具合に豹変する人間ってこわいですよね。とてもこわいです。

この後、すっかりバートンと仲良くなった一見、人の好さそうなチャーリーがいつその正体を現すんだろうとずっと気になります。

以下ネタバレあります・・・

ついにはチャーリーは殺人鬼だったことが明らかになるのですが、その前にチャーリーがNYに出張すると告げたとき、バートンは親切にもチャーリーに自分の親戚を紹介しご馳走してもらえ、とまで言っちゃってます。

これ・・・やらかしましたよね~

バートンの親戚もチャーリーに殺されたのにちがいない? と思いましたが、その辺は明らかにはされません。

2.疑問だらけ

と、まあこういう疑問がいくつも生じてくるわけです。

例えば、バートンと一夜を共にしたオードリーを殺したのは誰か?

犯人がチャーリーだとしたらどうやって部屋に入ったのか?

しかし翌朝、バートンに相談され、オードリーの死体を見たチャーリーは吐いてしまう・・・ということは犯人ではないのか?

その後、チャーリーはオードリーをどう処理したのか?

バートンの部屋を訪ねてきた刑事2人はベッドに残った血の染みを見ても何も言わないのはなぜ?

チャーリーがバートンに預けた箱の中身は何?

まさか人の頭部でも入っているんじゃあるまいな、と最後まで気になってしまった。

ホテルが燃え、その火の中をNYから戻ったチャーリーが歩いてくるのだが、なぜ火事になった?

火事は現実のこと?

チャーリーは本当にNYへ行ったのか?

バートンはその火事の中を逃げ出すが、チャーリーは部屋の中に戻ってしまう・・・なぜ?

ラストシーン、海岸で女性が海を見つめるシーン、これはバートンの部屋にあった絵と同じ構図なんだが、何を意味している?

殺人事件に巻き込まれながらも何とか脚本を書きあげたバートン、自分の最高傑作だと自負するも、大手スタジオの社長からは、けちょんけちょんにダメ出しされてしまう。

そのためすっかり茫然自失となってしまったバートンの実は妄想だったのか?

いやはや・・・こんな具合にわからないことだらけなんです。

しかし、バートン役のジョン・タトゥーロ、、そしてチャーリー役のジョン・グッドマンが素晴らしく最後まで緊張感持って観られる映画ですよ。

そうだ・・「不穏」という言葉がピッタリな映画ですね。

全編「不穏な空気が漂う」映画でした。

本作は1991年カンヌ国際映画祭パルム・ドール、および監督賞、男優賞を獲っていますね。

3.バートン・フィンク 作品概要

作品概要

作品名:「バートン・フィンク

1991年公開
監督・脚本:ジョエル・コーエン
製作・脚本:イーサン・コーエン
バートン・フィンクジョン・タトゥーロ
チャーリー・メドウズ:ジョン・グッドマン
チェット:スティーヴ・ブシェミ