これは好みが分かれるでしょうね~多くを語らないSF映画の傑作........「囚われた国家」
エイリアンによる侵略に対抗する映画ではなく、既にエイリアンに統治されてしまった後の世界を描いています。
エイリアンに支配され、都市を封鎖され、警察とドローンに監視される社会、しかもエイリアンの支配下において人類は最高の繁栄を享受していると信じてしまった人々が大多数の世界。
が、それでもエイリアンたちに対抗しようとレジスタンスを結成する人々もまたいました。
圧政を敷く米国政府に対し、市民が「Light a Match, Ignite a War(マッチをすり、戦争を起こせ)」と声を上げ、人類の主権を奪回する戦い、「革命の始まり」を描いています。
1.これは好みが分かれるでしょうね~多くを語らないSF映画の傑作
1)多くを語らないSF映画
本作を観始めてからしばらくは、わけがわかりませんでした。
なんせ多くを語ってくれません。
すべてを見せてしまわないんですよね。
一番よくわからなかったのは、シカゴ市警に所属するウイリアム・マリガンの役割なんです。
彼は警官ですから終始、レジスタンスのメンバーを追っているわけです。
周りの同僚が「もうレジスタンスなんか起こらない」と忠告してくれるにも関わらず。
でもウイリアム・マリガン演じるジョン・グッドマンがどう見ても主役だよなあ・・・とも思いましたし。
その主役がレジスタンスのメンバーたちを逮捕して終わり??
ずっとその点が引っ掛かったまま、本作を観ていたわけです。
しかしその疑問はラスト近くなって解消されますよ。
以下ネタバレあります。
一つは家庭用ホームビデオの画面。
生まれたばかりのガブリエル・ドラモンドに対しての彼のメッセージです。
「将来は教師か警官だな。
君には心強い味方がいる。
家族だけじゃなくみんなで君を守ってやる。
未来は君次第だ。」
と言って画面に向かって力強くうなずくビル(ウイリアム・マリガン)。
それからシカゴ市警の本部長は、統治者(エイリアン)たちと面談できるということ。
ビルはついに本部長となり統治者たちと会えるようになります。
と、ここまで来て、ようやく私、納得できました。
本作の意図がようやくわかりました。「ああ~そういうことなんだ!!」
もう一つのキーは透明のあれ、ですが、ここでは触れずにおきますね。
2)好みが分かれるでしょうね
本作は冒頭から暗く、しかも地味な印象。
主役がジョン・グッドマンですからね。
けなしているわけではありませんよ。
彼は、コーエン兄弟作品の常連で「バートン・フィンク」や「ビッグ・リボウスキ」などで癖のある脇役を演じて強烈な印象を残している名優です。
でも主演俳優というわけではなかった彼が本作においては主役級ですから。
他には、ヴェラ・ファーミガを除けば、私の知らない俳優ばかり。
だからどうしても華やかさに欠けると言うか、地味な印象に終始します。
派手な戦闘場面もないですからね。
エイリアンたちと戦うといった勇ましいシーンなんかありません。
3)用意周到さに見る覚悟と憤怒
本作では冒頭の2019年のシーンから2027年までを描いていますから、レジスタンスたちは少なくとも8年間準備してきたのかなと思われます。
インターネットなどの現代の情報機器は使えず、様々な手段でメンバー同士、連絡を取り合っています。
メンバーそれぞれ役割があって、それらが明らかになってくる後半はテンポもよく緊迫感ありますね。
そしてその作戦が何とも用意周到なんですよね。
私自身、用意周到に事を進めるとか用意周到に計画する、なんてことが出来ない人間なので、ここまで長期にわたった作戦を遂行できるなんて驚きです。
ちょうど今、池波正太郎さんの「真田太平記」を読んでいるのですが、そこに出てくる忍者みたいですよね。
来るかどうかもわからない「その日」のために、2代3代にわたって地域に溶け込んで準備を怠らない忍者たちに共通するものを感じました。
ここまで用意周到な作戦を準備できるということは、それだけの覚悟あるいは憤怒といったものが底にはあるのだろうなと思いましたよ。
淡々と描かれているのですが、それだけによけい彼らの覚悟が伝わってくる、という気がしました。
ジョン・グッドマン、決して華やかでも劇的にも描かれてはいませんが、渋さと凄みと、そして怒りも感じさせて、彼でなければ出来ない役なんだと思いました。
2.「囚われた国家」の作品概要
作品概要
作品名:「囚われた国家」(Captive State)
監督: ルパート・ワイアット
3.あとがき
エイリアンたちに侵略される映画というと、「インデペンデンス・デイ」(1996)を思い出しますが、まあそれと真逆の映画というところです。
大統領が「Independence Day~!」と叫ぶシーンなど、さすがに高揚しましたが、そういったシーンは一切ありません。
後からジワジワッとくる・・・という感じでしょうか。
ロッテントマトの評価も低いようですね。
でも、本作は私の好みにピタッとはまってくれましたよ。