映画は心の筋トレ

子どものころ観たゴジラ映画に始まって今も観続けている映画の備忘録

「散り椿」腰の低い姿勢から太刀を振り下ろす岡田准一の体幹の強さ

散り椿は、葉室麟(はむろりん)による時代小説を原作とした映画です。

葉室氏は2017年に亡くなられているんですね。

今回は主役の瓜生新兵衛を演じる岡田准一君のアクション、殺陣を観たかったのですが、予想以上のレベルでしたよ。

1.岡田准一の殺陣

まず腰が落ちてます。

腰を低く落としたままの姿勢で殺陣が出来る、激しい動きが出来る点にまず驚きです。

こう低い姿勢を維持できるというのは相当、体幹が鍛えられているのでしょうね。

そして剣先の動きの速さと鋭さ。

円を描くかのように剣先を動かしたり、このような殺陣、剣の使い方というものは過去、観た覚えがないですね。

ちょっとフェンシングのような剣先さばきという風にも言えるかと思いますが、剣の達人同士が相対すればこのように細かい、速い、鋭い動きが要求されるのかなあ、とリアルに感じられました。

それに剣が触れ合う金属音が「シャリシャリっ」と響くのが、いかにも切れそうな刃物の怖さを象徴していてゾッとするものもありましたね。

それと結構、剣を振り回すだけではなく左手を添えるとか、あるいは左手で剣を押し込む、といったような左手をうまく使っているなあ、という場面も多かったです。

綺麗で華麗な舞のような剣術ではなく、よりリアルな闘いはこういう風になるんだよ、と見せてくれたような気がしますね。

面白かったのは、石段の途中、切り合いの最中に新兵衛が相手を掴んで後ろ向きに転がり(一瞬、巴投げかと思った?!)そのまま相手のマウントをとる場面。

「マウントをとる」というのは、総合格闘技で相手の上に乗りかかり、相手より優位なポジションをとることを意味しています。

この辺も格闘技に精通している岡田准一君だからあえて出した技なのか、本当にサムライがそういう技も使っていたのか??
ちょっと一瞬、笑える場面でもありました。

2.新兵衛の立ち歩く姿

新兵衛は普段、立ち歩く姿はやや猫背気味。

サムライのイメージにある背筋がビシッと伸びている、というのではなく、どちらかというと獰猛なケダモノというイメージでしたね。

でもサムライは背筋が伸びている、というのは勝手な思い込みで、実際にはこのような姿勢だったのかもと想像させてくれます。

いつでも相手に飛び掛かれる、もしくは相手の動きに反応できる、ようにこういう姿勢をとるのでしょうね。

いつ刺客に襲われるかわからない新兵衛にとってはより実戦に役立つ姿勢なのか、とこの点も興味深かったです。

それから、例えば、相手の手首の腱だけ切って動けなくさせるだけの場合と、相手を切り殺してしまう場合と、明らかに区別して剣を使っていたので、これは無益な殺生はしないという意味なのか、やたら人を切ればいいというのではなく、これまたよりリアルに見える場面でした。

3.真剣の素振り

新兵衛の腰の低い姿勢に触れましたが、雨中、竹林の中で素振りをするシーンがあります。

かなり重い真剣をシンプルに斜め上段から袈裟斬りに振り下ろすだけの地味な練習を繰り返すシーン。

日本刀は大体、800グラム~1.5キログラム程度の重さらしいです。

プロ野球の木製バットが1キログラム弱、剣道の竹刀が500グラム程度なので、想像以上に重いわけですね。

腰を低くしてこの真剣をシンプルに振るだけの練習のシーンがこの映画で最も印象的だったんです。

腕の筋力だけでなく全身の筋力が鍛えられるだろうし、何より体幹が鍛えられるはず。

この地味な練習があってこその美しい刀さばきなんだなと納得しました。

岡田准一君は「蜩の記(ひぐらしのき)」(2014年)の撮影の際には、居合の道場に弟子入りして修練に励んだそうですから、それ以降も殺陣の修練を怠らなかったのでしょうね、きっと。

4.散り椿 作品概要

作品概要

作品名:「散り椿

2018年公開
監督:木村大作
瓜生新兵衛:岡田准一