「孤狼の血」若手エリート刑事が覚醒する
昭和63年(1988年)広島の呉原市という架空の都市を舞台に、暴力団抗争の火種となる金融会社社員の失踪事件を追う刑事たち、対立する二つの暴力団の抗争、暴力団と警察との癒着などを描く。
この手の映画は「仁義なき戦い」(1973)はじめ、何本も製作された実録ものと呼ばれた作品を当時は結構、観たものです。
でも、徐々にそういう映画は敬遠するようになり以来、ほとんど観ていないんです。
本作もてっきりそういう実録ものみたいな作品なのかなと思っていたのですが・・・
違いますね!
1.変貌していく日岡
広大(広島大学)出の若手エリート刑事、日岡は捜査のためなら手段を選ばず平気で暴力団とも癒着する大上とコンビを組むわけですが、実は、この日岡、大上の違法捜査や暴力団との癒着を監察官に報告する内偵役です。
当初は、大上の無法ぶりにことごとく反発する正義感ぶりを発揮するのですが、日岡が大上と組まされたのは実は、大上の違法捜査の証拠を固めることが目的ではなく、幹部たちの不祥事をもみ消すためだと日岡は気づきます。
すべて自分たちのメンツのためだったと・・・
このあたりから日岡が徐々に変貌していくんですよね。
一方、大上はコンビを組まされた日岡を「人として勉強不足」などと揶揄しながらも猛烈にしごくわけです。
日岡が薬剤師、桃子の部屋で「暴力団より暴力的なオッサンと毎日、暴力団を追っかけまわしとるんで」とぼやき、それを桃子に「早口言葉みたいね」と突っ込まれるシーンには笑えます。
2.覚醒する日岡
大上が拷問を受けたのであろう豚小屋で大上のライターを発見した日岡がついに覚醒します。
実行犯をその場で袋叩きにする。
日岡が、殴り、倒し、後頭部を地面に叩きつけ、倒れた相手にパンチを浴びせ続けるシーン。
これは素晴らしい?!
ここから話は一気に盛り上がっていきますよ。
3.日岡の空手技
本作では、日岡は空手をたしなむという設定。
でも空手の技は出ません。
ただ感情に任せてやたらめったら殴るだけでしたね。
「寸止め」(相手の顔面の寸前で拳を止める)も見せましたが、腋があいているし、一寸どころか10cmは相手の額から距離があったのでこれは「寸止め」とも言えません。
空手の嗜みはないように見えました。
日岡演じる松阪桃李君、体もスリムだし動きもいいです。
なので惜しくもこの点だけですよ、はい。
松阪桃李君がエリートの正義漢から変貌を遂げ、暴力団(員)を駒として使うようになっていくシーンは見事です。
役所広司は一線を越えてしまってる暴力刑事を生き生きと演じてました。
覚醒した松阪桃李君には目を見張ります。
日岡の成長物語なんですね、この映画。
それから、いつも顔が青ざめていて目がいっちゃってる感じの組員役の中村倫也君もよかったですね。
それと組長役の石橋蓮司、最後は素晴らしいですよ。笑えますけど・・・
4.虎狼の血 作品概要
作品概要
作品名:「孤狼の血」