「新聞記者」人間として懊悩する姿をもっと見せてほしかった
本日の映画は「新聞記者」
神崎の死に疑問をもつ杉原(松坂桃李)と、資料を調査している毎朝新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)が協力し、この医療系大学の目的がウィルス研究から更には軍事転用、つまり生物兵器の開発であるという結論に行きつく。
毎朝新聞はこれを一面で報じるが、当然、政府は反対するであろうし、誤報ということになればそれは記者にとって命取り。
吉岡と上司がその点で逡巡した際に、杉原は、政府が反対したら実名を出して構わないときっぱり申し出る。
当然、杉原は上司である多田(田中哲司)から懐柔される(脅される)のだが・・・
1.エリート官僚、杉原の決意は?
杉原はエリート官僚で、内閣調査室のあり方に疑問を抱いているのですが、身ごもった妻もいて、家庭を、そして今の生活を壊すわけにはいかないはず。
それなのに何故「実名を出しても構わない」と吉岡に言ったのでしょうか?
それが、どこまでの決意だったのか?
なんです。
以下ネタバレあります。
2.ラストシーンで杉原は何を?
ラスト、杉原は道路を挟んで反対側にいる吉岡と向き合い、何かをつぶやきます。
このシーン、何を言ったのかはわかりません。
私には「ごめん・・・」という口の動きに見えましたが、どうだったのでしょう。
杉原は上司に懐柔され、自分の意志を曲げてしまったのか? 生活の安定を選択したのか?
この点は明示はされないのでわからないのですが、杉原の呆けたような表情はそれを示唆しているように思えました。
このシーン、松坂桃李の表情、生気のない目、は素晴らしい演技だと思います。
ただ、それまで描かれてきた杉原という人間像からはあまりにかけ離れていて、この変貌ぶりに唐突な感は否めなかったですね。
「コロッと」寝返ったわけです・・・コロッと。
ここまでの間、杉原がもっと人間として懊悩する姿を見せてほしかったなあと、この点は残念でした。
3.不気味な内閣調査室
内閣調査室の職員たちが暗い(なぜか青っぽい)部屋で黙々とキーボードを打っているシーンは不気味。
それと全編を通して、人の呼吸音、ため息や息遣いがよく聞こえるのが印象的でした。
杉原の上司を演じる田中哲司、ネットによる印象操作を指揮し「これも国を守る大事な仕事だ。」と詰め寄る、冷酷なマシーンのような人物を演じていて印象的です。
当時の政権を批判する内容の映画になっているので、その点ではよくこの映画を作りましたね、とは思うものの、現実に起こっている事件を並べているだけで内容的には、驚くような新鮮味のあることは特になかったな、という印象も一方でもちました。
でもしかし、この手の映画はもっともっと作られてほしいです。
そういう意味で、エールを送りたい作品でした。
4.新聞記者 作品概要
作品概要
作品名:「新聞記者」