映画は心の筋トレ

子どものころ観たゴジラ映画に始まって今も観続けている映画の備忘録

「江分利満氏の優雅な生活」昭和30年代典型的サラリーマン

さて今日の映画は岡本喜八監督の江分利満氏の優雅な生活

原作は山口瞳氏、この小説で直木賞を獲っていますね。

1.EVERYMAN

小林桂樹演じる江分利満氏(EVERYMAN)大正15年生まれなので昭和の年数が年齢と一致する。

サントリーの宣伝部員、36歳、大酒のみ、片目だけつぶるということができない、100までの数字を数えられない、口笛が吹けない、音痴、春夏秋冬ランニングシャツ、などなど、不器用で不格好。

本人は「カッコいいのは恥ずかしい。」と言う。

この彼、ふとしたきっかけで小説を書くことになり、昭和30年代典型的なサラリーマンの日常を書くとこれが受け、ついに直木賞まで獲ってしまう。

社内の祝賀会で飲み始めたのはいいが、そこから社員を引き連れはしご。

最後は自宅に社員2名を連れこんで、社員たちが迷惑そうな(眠そう)顔をしているのにも構わず、延々と自説をぶつ。

途中、奥さんの夏子(新珠三千代がとてもいいのですよ)が(慣れた感じで)「もう4時ですよ・・・」

いやいや、それは可哀そうです?!

で、一睡もせずそのまま出社するんですから・・・サラリーマンはつらいよ。

この江分利満氏が延々とぼやくシーンは見物でした。

山口瞳氏自身を投影しているのでしょうね。

山口氏は筋金入りの反戦主義者なのでそのテーマは重い。

「白髪の年寄りが甘い言葉で若者たちをそそのかした・・・俺は許さない。」というセリフに怒りが集約されているように思えました。

私にはとても面白かったんですけどね、この映画。

でも多くの観客がこの小林桂樹一人が延々と語るシーンで白けたかもしれませんね、もしかして・・・。

興行的にはやっぱりうまくいかなかったんじゃないかとも思います。

2.母亡き後、一人茶漬けを

母親が亡くなった後、一人でお茶漬けを食べるシーンに一番笑えました。

勿論、悲しいはずのシーンなんですが、涙を流しながらもそれでも、しっかりお代わりする。

奥さんに「らっきょうは?」と催促したり・・・。

地味だけどいい俳優でしたよね。
小林桂樹さんは第18回毎日映画コンクール主演男優賞を受賞。

それからバーの客として、山口瞳氏、小島功氏、梶山季之氏、岡部冬彦氏、伊丹十三氏が出演していたようです。

「梶山さん」って誰かが呼んでたので「あれっ?」と思ったけどわかりませんでした。

奥さんの新珠三千代、父の東野英治郎もよかった。

天本英世も宣伝部員の一人としてまたまた異彩を放っていました。

全然、優雅な生活じゃない、昭和30年代、中年男の奮闘物語でした。

私はこういう映画、好きなんです。

3.江分利満氏の優雅な生活 作品概要

作品名:「江分利満氏の優雅な生活

1963年公開

監督:岡本喜八

江分利満:小林桂樹
夏子:新珠三千代
明治:東野英治郎